解離と物語の死 「「豹変する心」の現象学―精神科臨床の現場から/大饗広之」
上記のような理由で筆者は精神科領域での突発的な、物語を欠くようにみえる暴力の出現を論じているが、もしそうなら社会全体で暴力事件が増加するのではないのか。物語が解体する以前のノスタルジー的な過去を構築してしまったら、ただの若者バッシング、世代バッシングになってしまわないか、というのが疑問。
現代社会においては、虐待、いじめ、対人的なひきこもりの増加など、攻撃性を内向させる機会に満ちている。攻撃衝動の内向と並行して、世の中は軽微な解離に満たされるようになったのであり、物語の切断面をいたるところに生じさせている。その裂け目にそって潜行していた攻撃性が暴発的に解放されるのではないかというのもありそうな仮説である。 p.112
「豹変する心」の現象学―精神科臨床の現場から | |
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