解離と物語の死 「「豹変する心」の現象学―精神科臨床の現場から/大饗広之」


 現代社会においては、虐待、いじめ、対人的なひきこもりの増加など、攻撃性を内向させる機会に満ちている。攻撃衝動の内向と並行して、世の中は軽微な解離に満たされるようになったのであり、物語の切断面をいたるところに生じさせている。その裂け目にそって潜行していた攻撃性が暴発的に解放されるのではないかというのもありそうな仮説である。 p.112
 上記のような理由で筆者は精神科領域での突発的な、物語を欠くようにみえる暴力の出現を論じているが、もしそうなら社会全体で暴力事件が増加するのではないのか。物語が解体する以前のノスタルジー的な過去を構築してしまったら、ただの若者バッシング、世代バッシングになってしまわないか、というのが疑問。
「豹変する心」の現象学―精神科臨床の現場から
「豹変する心」の現象学―精神科臨床の現場から
勁草書房 2009-09-25
売り上げランキング : 154970

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
臨床瑣談 続
自閉症の現象学
単純な脳、複雑な「私」
神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡
日時計の影