精神分析の凋落とギル最後の書 「精神分析の変遷―私の見解/マートン・ギル」

 『転移分析』の著者で精神分析家のマートン・ギルの最後の書。ちょうど亡くなった年に出版されています。すでにマネッジド・ケアの導入やらで精神分析は凋落しつつあり、社会構成主義などを引きつつ、精神分析のスピリットさえ失わなければもっと柔軟にやっても精神分析は生き残っていけるはず、というギルの最後の主張を読むことができます。
 しかし、ギルが批判している頭かちかちの分析家の主張を読むとほんとマネッジドケアがなくたって分析は凋落してたのだろうと思いますね。理想の分析家はついたての向こうにいて、声も性別がわからないように偽装されているのがいいんだって!何という中立性。フィリス・グリーネイカーの極論「分析家は、一般に公表されるような委員になるといったような、いかなる公的な活動にも参加しない方がよいと信じていた」・・・グリーネーカー本書いてたらダメじゃん。

精神分析の変遷―私の見解
精神分析の変遷―私の見解Merton M. Gill

金剛出版 2008-11
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