精神科医、タフでなければ生きられない 「激励禁忌神話の終焉/井原裕」

 「うつブーム」の現在、こういうタイトルにするのは売れ線かもしれないけど、ちょっとミスリーディング。このタイトルでは誰しもうつ病本と思うではないですか。それで読むのを後回しにして失敗しました。
 もちろん「うつ」はこの本にとっても大事な要素です。「激励」という訳はともかく encourage = 勇気を与えることがどうしてうつ病にとって禁忌なのか、「統合失調症の患者は病識がない」と同じくらい問題ある一般化ではあります。
 でもやっぱりこの本の本質は「ハードボイルドの主人公としての精神科医」でしょう。ぼくがタイトルつけるなら「精神科医、タフでなければ生きられない」「ハードボイルド精神科医、病院を行く」、そんな感じ。
 最初は筆者の圧力にちょっとたじたじとなっていましたが、読み進めるにつれてほんとうにハードボイルドのヒーローが犯罪に巻き込まれいてくのを読むみたいな興奮を覚えながらページをめくりました。
 5分間診療でいかに有意義な精神療法を行うか、病院へのクレーマーへの対処法、いかに少ない抗うつ薬で治療を行うかなどなど。
 あーこれハードボイルドじゃん、と思っていたらほんとうに「精神科医はタフでなければ生きられない。やさしくなければ精神科医の資格がない」(手元に本がないので微妙に違うかも)という一節があってちょっとしびれました。
 お勧めです。

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 タイミング良く新刊も出るようです。

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(←べ、別にクリックしてほしいわけじゃないからね。勘違いしないでよねっ!)