驚きの展開「本とうつ病と私/泉崎真実」

 タイトルどおりうつ病になった精神科医が著者で、ここまではよくあるのですが、びっくりしたのはこれが全部書評だと言うこと。書評ではあるけれど、かなり著者のプライベートな部分についても書かれてて、書評を読み進めるうちにいろいろな著者の生活の変化が少しずつ、わかっていくというという展開です。
 驚きの展開を実感したい方は以下は読まずに、まず読んでみてください。


 機能不全家族に育ったという著者はやはり精神科医の夫、そして自分の両親との二世帯住宅暮らし。教員だった親にあわせいい子として育った著者は自らを機能不全家族で育ったという認識を持っている。そして最近の関心はフェミニズム・・・。職場でもワーカホリックぎみだった著者は夫とともにうつ病を発症。仕事を減らしながらのリハビリの日々。
 ここら辺は確かに凄い業務量で、うつ病になるのも無理はない・・・と普通の感じで読んでました。
 頭がぐらぐらしてきたのは、ステレオタイプな家族観への批判があり、本をどんどん買い込む夫の話が出てきたと思ったら、次の書評で夫と離婚したことがさらりと書かれているあたり。ここらへん書評なので詳細は書かれておらず、気になりつつも書評を読み進めると、要介護の母親を見ている父親が身体的な疾患から認知症となっていくあたりで介護の本の書評が。学習障害かつアルコール依存の家庭で育ったパートナーの出会いから、インナーチャイルドあたりの癒やしのプロセスを経て、過去のセックス依存などの話が出てきてアダルトチルドレン関係の書評。そして両親と「絶縁」したいう記載をみて、要介護と認知症の両親はどうなったんだろうと気になっていると、最後の書評でどうやら二世帯住宅に「絶縁」したまま暮らしているということが判明。
 いや、びっくりしました。あんまりおもしろがるのも何ですが、書評集の形式をとったミステリっていうのもありかな、と思ってしまいました。

本とうつ病と私
本とうつ病と私泉崎 真実

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