「映画が私を変えた: 『追悼のざわめき』＆小人症の妹／河添 まみこ 安岡 卓治 河添 晋一 浅田 トモシゲ」

　大学生の頃に「追悼のざわめき」という映画を見た。女性連続殺人犯の青年が主人公で、その青年は殺した女性の体を切り刻んでマネキンに埋め込み、ついには妹とも交わった上に殺すというサイコ・ホラー・ブーム以前にサイコ・ホラーしていた作品だった。その映画で主人公に劣らずインパクトのある存在が青年が勤める清掃屋の社長の「小人症」(こういう医学用語はなくて監督の創作と言うことだ)の妹の夏子だった。夏子はその身体の障害から周りの人間から嘲笑われ、はては強姦される。誕生日にだけ儀礼的に兄と性的交渉を持つ。そんな過激な内容から、何となく天井桟敷などの劇団に所属している人なのかと思っていた。
　しかし、二十数年後に出版されたこの手記を見ると、「夏子」を演じた女優が全く演技経験のない素人だったと言うことを知った。家族からさえ差別されてきた生い立ち、社会に出てからの差別に始まり、女子中学校にアポもなく乱入させられたり、監督から厳しい扱いを受けながら、筆者が強いしたたかな女へと変わっていく過程が描かれている。
　後書きはご主人が書かれていて、今は幸せな結婚生活を送っているとのことだ。
　映画での一瞬のすれ違いでしか彼女を知らなかったのだが、その後も時は流れ筆者には筆者の時間が流れていたのだなと思うと感慨深かった。

映画が私を変えた: 『追悼のざわめき』＆小人症の妹
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