Life History

 ドイツのハイナウに生まれる。父親は医師。母親は音楽家。イエナ、ハイデルベルクミュンヘン医科大学で学ぶ。1922年、ミュンヘンで医学の学位取得。1925年からベルリンの精神分析インスティテュートで学ぶ。1925-29年、オットー・ヘニケルから教育分析を受ける。1930年教育分析家の資格取得。1935年ゲシュタポに患者の秘密を伝えなかったために逮捕される。糖尿病の悪化のためライプチヒの病院に移送される。1938年、アニー・ライヒの助力によってプラハ経由でアメリカに移住。ニューヨークで開業する。


Theory

●欲動論と対象関係理論の統合

 欲動論を保ちながら対象関係が内在化されこころの構造となっていく課程を描き出す。
 クラインの「対象」という用語の曖昧な使い方を批判

 自己   心と体を含むその人すべてをさす。
 自己表象 身体的、精神的自己の自我内部にある無意識的、前意識的、意識的表象。
 対象表象 ある人物の全体、または一部のイメージ

自我の成長
  Freud Jacobson
自我 イドが分化 融合自己−対象表象が分化
(2次)ナルシズム 自我にリビドーが備給される 自己表象にリビドーが備給される
マゾヒズム 自我に攻撃性が備給される 自己表象に攻撃性が備給される

 自我は欲動の影響を受けながら、対象との関係によって成長する。

 出生直後は欲動も未分化のままで融合した自己−対象表象に備求されている。(1次ナルシズム)
 この融合した自己−対象表象が自我の起源となる。
 対象との充足と欲求不満の関係を通じて、欲動がリビドーと攻撃性へと分化していく。そして自己表象にはリビドーが、対象表象には攻撃性が備給され、自己表象と対象表象の分化に貢献する。そしてリビドーと攻撃性の一部は融合し、中和され自我に備給される。 この時に母親の自我が外部自我として利用され、対象との原始的な同一化によって、自我が成長する。

 自己表象と対象表象が分化した後でも、極度のフラストレーションによって自己表象と対象表象が防衛的な再融合を行うことがある。(退行再融合/精神病的同一化)
 退行再融合によって自他の境界は曖昧となり、幼児の共生精神病、大人の精神分裂病の素因となる。


超自我を支える3つの層。

 1)(生後1年目の終わりから2年目の始め)
共生期のフラストレーションを与える母親を反映した、サディスティックで処罰的な超自我先駆体。
 この時期自己表象と対象表象は十分に分化しておらず、容易に再融合するため、対象に向けられる攻撃性は、自己にも向けられる。
 トイレット・トレーニングにおいて排泄物が汚いとしつけられると、幼児は自分自身が汚いと思いこむ。反動形成によって排泄物が汚いという感覚はコントロールを失うことへの恥ずかしさ、きれいであることへの誇りへと変えられる。

 2)自己表象がより現実的になっていく一方で、理想的な自己表象と、理想的な対象表象からなる自我理想がつくられ、超自我の一部として自我を導くようになる。

 3)エディプス期に両親の現実的、道徳的側面を同一化によって内在化する。

抑鬱、情緒発達

1)情緒
 力動的なのもなのか?それとも状態なのか?
 →緊張緩和であり、解放である。快−不快原理が果たす機能は緊張と解放というふたつの極に最適の揺れを生みだす。

2)抑鬱・・・自我と超自我の内部で、自己表象と対象表象の再融合が起こっているが、自我構造までは解体しない。
 分裂病・・自己表象と対象表象の断片が再融合し、心的構造は完全に解体する。