思想史のなかの臨床心理学/實川幹朗

 学会ではギター侍さながら、和服姿で異彩を放っている實川先生の御著作です。無意識の発見はウソだった。実は「意識化」の優位という物語が語られたにすぎない、という視点は面白かったです。


 わが国の臨床心理学で最大の学会である日本心理臨床学会は、この分野のさまざまな「学派」を横断する組織である。したがって、特定の「学派」に支配されているわけではない。だが、「カリスマ」に依存する一般的な傾向は存在する。例えば、この学会の大会では、聴衆は研究内容ではなく、その場をまとめる「座長」がだれであるかによって、どの研究発表を聞くか決める傾向にある。(p.220)
 ビオンの用語で言えば依存規定想定集団ということ。
 この路線が、座長と連名発表にしろという今回の事例検討の形式に繋がるわけですね。

  • p.215 「分析の隠れ身 analytic incoginito」といいだしたのは小此木先生じゃなくて、ローレンス・キュビーでは。

思想史のなかの臨床心理学―心を囲い込む近代
實川 幹朗

講談社 2004-10
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