非行少年の加害と被害/藤岡淳子

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内容(「BOOK」データベースより)
非行を対人関係における暴力という枠組みでとらえ、非行臨床の現場における実践と、米国における新たな非行理論による理解とを武器に、今、非行少年に社会としてどう働きかけるかを模索した書。

内容(「MARC」データベースより)
少年鑑別所や少年院で20年間、非行少年たちの移り変わりをみながら、少年非行とその背後の社会がどう変化したか、彼らの非行行動を変化させるためにどう働きかけるか、問題提起する。

目次
第1章 非行少年のタイプ
第2章 性犯罪少年はモンスターか
第3章 薬物乱用の快感と泥沼
第4章 少女売春の不易と流行
第5章 少年と暴力
第6章 少年非行における人格要因とリスクアセスメント
第7章 非行少年における被害体験と加害行動
第8章 何が非行少年を作り出すのか
第9章 犯罪行動を変化させるには―おわりに代えて


 村瀬嘉代子先生のかつての司法領域でのお仕事を拝読すると、成長し、変化する少年司法の光の部分を見てこころが和むけれど、藤岡先生は少年司法のダークサイドをなまなましく描いている。タフでなければ生きられない世界。


 Aは累犯刑務所で会った四十歳代の男性である。小柄で色白、おとなしい窃盗犯であった。しかし、面接時淡々と正直そうに述べた生育歴はでたらめで、過去の記録を見ると、小学生時から家出、放浪、窃盗を繰り返し、少年時には幼い男児を車に監禁して、縄で縛った上に強姦するという凶悪な犯罪もしていた。しかし最近は精神科入院を繰り返していて、刑務所に入るのは久々であった。小学生時にはてんかんの診断で精神科医療を受け、刑務所では人格障害とされ、最近の入院は精神分裂病によるものであった(病歴照会で事実は確認された)。
 二度目の面接で事実を確認すると、素直に悪びれず嘘をついたことを認めた。本人に精神病院入院についてどう思うかをたずねると、「精神分裂病の診断を受けて安心した。小さい頃から変だったけど、病気のせいだったとわかった」と納得していた。Aは納得していたが、筆者としては釈然としないものが残った。(p.3)
 こうした「外在化」を目にすると、やっぱりナラティヴ・セラピーは外在化を理想化しすぎるのではないかと思う。こういう領域で解決指向が有効ならすなおに頭を垂れます。


 アメリカでの性犯罪に対する処遇。「専門職としての臨床心理士」の欄で書いたペニス測定法も掲載されていたが、「うんざりテープ」はもっとすごい。まず適切な刺激でマスターベーションを行った後に、不適切な刺激で45分マスターベーションを続け、これをテープに録音し、治療者がチェックするということを週2,3回2ヶ月続けるという。録音したってそんなに音は入ってないんじゃないかと思うけど・・・
 藤岡先生はこんなやり方で効果があるのか周囲の男性に聞いて回ったが、


「(考えるのが)怖すぎる」と言って、誰も確たる答えをくれなかった。
 そりゃそうだ・・・


 ともあれお勧めの一冊。司法関係の方は皆さん読んでいるのでしょうから、特にその周辺領域の方に。

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から
非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から藤岡 淳子

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