今年は国際乳幼児精神保健学会が日本で開催されたこともあり、発達臨床関連本では良書が多いですね。訳者の方も書いておられますが、スターンやオグデンなど各理論家の間主観性理論の比較を行った2章はバックグラウンドがわからないと読みづらいですが、ビービーの書いている症例は非常におもしろかったです。
母子間の相互作用、相互調整ということをモデルにするならば、精神分析の両者が視線をあわせないというやり方にはデメリットも大きいのです。アクティングアウトではなくてエナクトメントということを言い出したジェイコブスがビービーの症例についてコメントをしていますが、彼のスーパーバイザーが逆転移の活用に最も初期に注目したアニー・ライヒであり、患者の言語でなくふるまいの分析に注目したのが彼女の元夫、オルゴン療法のヴィルヘルム・ライヒであったなどおもしろい精神分析史的事実も読むことができました。
アニー・ライヒは患者からお互いの姿が見える位置に座って分析を行ったそうです。患者に自らの姿をビデオ撮影することを許可したビービーの姿勢には何だかクライアント中心療法との類似まで感じさせます。