セラピストと患者のための実践的精神分析入門/オーウェン・レニック

 考えてみると精神分析というの難儀な療法だよね。実践的精神分析っていう言葉をレニックは伝統的な臨床的精神分析と対置するように使っているけれど、それでは何が実践的かというと、自己開示をするとかセラピストの都合でセッションをキャンセルするのに理由を告げるというか、普通のカウンセリングであればあたりまえのやり方なんだよね。精神分析がある意味教条化、硬直化して主流から外れる中で、もう少し柔軟な枠組みへの模索が続けられていて、それはとっても好ましい流れだと思います。
 妙木先生の解説はいつもながらコンパクトで的確です。先日取り上げたビービーの症例にコメントしていたジェイコブスのエナクトメント論が最近の精神分析で結構重要なトピックとなっていることがわかりました。ただ、エレンバーグの "intimate edge" の訳語、「親密な極」というのはどうかな。「親密な極(きわ)」とよめば意味は通るけど、極(きょく)と読むと中核という意味になっちゃうからちょっとミスリーディングだと思います。
 訳文はちょっと直訳調で読みにくいなー。


 私はこれから片腕の分析家を捜します、そうすればかれはいつでも『一方では、・・・しかしまたその一方では』と言えないでしょう
 これなんか on the other hand という英語を思い浮かべないと意味が通じないし。
 試訳は以下の通り。

 次は一つ目小僧の分析家でも探しますよ。そしたら見方も一つでしょうからね
セラピストと患者のための実践的精神分析入門
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