心理療法は一代限りで継承はできない、というのは村瀬嘉代子先生らしい厳しいお言葉ですけれど、それは個人という者は死にゆき、失われゆくという断絶の孤独をも表しうる言葉だと思います。誰も誰かと同じセラピーをおこなうことはできないともいえます。なぜならセラピーはセラピストと生き方と切り離して考えることはできないし、人生というものはただ一度しかないのだから。
変容性内在化といってもいいし、リ・メンバリングといってもいい、セラピストもいつかは死に、その影響を受け、対話をしながら、セラピーは変化しながら受け継がれていく。それでよいのだと思います。
安克昌先生がいたからこそ、細澤仁先生が「解離性障害の治療技法」を書き、マイケル・ホワイトがいたからこそ小森先生が「ナラティヴ再訪」を書く。どこかにオリジナルがあってそれが劣化コピーされていくのではなく、そうした歩みはいつだって再訪であり、先に進んだ人の轍を踏みながら、踏み外しながら、ぼくらは進むのでしょう。
ナラティヴ実践再訪 | |
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