今年度は松木邦裕先生の「精神病の精神分析的アプローチ」と「摂食障害というこころ」が出版され、松木先生を師と仰ぐ祖父江先生がこの本を、細澤仁先生が「解離性障害の治療技法」を出されるなど、日本的クライン論がどんどん浸透した年でもありますね。
本場のクライニアンって筋金入りの変態、サブミッションードミネーションみたいな世界って感じがするんだけど、日本のクライン派、特に松木先生関連の流れは、情緒的なしっとりとしたSMの世界っていうふうに思うんですよ。たとえが悪くてすみませんが。それは結構個人的にはいいなと思います。単に投影同一化でサドマゾヒスティックな血なまぐさい内的対象関係を描くだけだとほんとげんなりするだけで、やっぱりそういう業を背負った悲しみとあきらめが描かれないと日本人的な心性は満たされないというか・・・
祖父江先生の臨床家としての歩みが振り替えれる論文集となっています・・・
スペイン系の人の表記が「ゴンザレツ」「アルヴァレツ」で何か居心地悪い。v はb音、zはs音で「ゴンザレス」「アルバレス」でいいと思う。これを「ヴァ」にするなら、「レベリー」を「レヴェリー」にすればいいのに。
- p.236 「寄生」ということばは寄生植物としての松茸や茸類を連想させるように、そもそもファリックなイメージを喚起させる 祖父江先生が学会発表したときの木部先生のコメントなんだけど、それってけっこう個人的に偏った連想ではないかな・・・松茸は寄生植物じゃないというかそもそもキノコは菌類であって植物じゃないし。ヤドリギとかラフレシアとかにファリックなイメージを見いだすのは無理があります。まあ解釈の内容がかならず性格じゃないと効果ないわけではなく、実際、祖父江先生は納得してこころに残ったからこそ書籍に記しているわけで、あんまりへんなつっこみをするのもやぼなんですけど・・・。でもあんまりとんちんかんな解釈に患者さんをつきあわせるのもかわいそうだから、やっぱり現実吟味は必要になってくると思います。木部先生は「こどもの精神分析」で子どもの描いたロケット団の胸につけたRマークの絵を見て「Right=正義」の「R」と解釈した前科もあるし、個人的な連想と一般的な連想を区別する必要があるでしょう。
対象関係論の実践―心理療法に開かれた地平 | |
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