上は購入してしまったのでまだ読んでいないので読む順番が逆になってしまいました。でもフェレンツィから対象関係論への流れだから、きっとこっちの方がおもしろいですね。講義の書籍化、しかも分析界の裏話もふんだんに書かれているので楽しく読めます。
しかしほんとうに藤山先生は率直な方ですね。無料でセラピー受けるような人は「寄生虫的」だし、現代日本の格差社会も明治時代に比べればまだまだ。本当に自分が変わりたければ年収の10%くらいはセラピーに払え、ですか。
まあそこらへんはまだいいのですが、自分が見ているのはスキゾイドの臨床家が多くて、そういう人の中にはものがよくわかって内省するけれど、何らインパクトが感じられず、こっちは退屈になってくる・・・って臨床家だったらこの本当然読むんじゃないんでしょうか。大丈夫なのかと読んでいる方が心配になります。
まあ本質とはあんまり関係ありませんが、分析は細部が大事なので。ツッコミます。
- ポーラ・ハイマンの表記は、ドイツ生まれ(後にイギリスに帰化)だから個人的には「パウラ・ハイマン」にしたいな。
- p.68 ビオンが高校の教師をやっていた頃、学生の姉とつきあったのでクビになったと書いてありますが、たしかあのフランス語の伝記には男子学生との同性愛を親に疑われてクビになったと書いてあったと思います。
- p.70 フーク・ヘルムート(本書表記は「フーグ・ヘルムート」)の甥による殺害が、「養子」による殺害と書いてあります。まあ、ひきとって同居していたのだから養子のようなものですけど。
- p.89 ハンナ・スィーガルという人が、象徴形成の非常にプリミティブなかたちとして、象徴的同等視 symbolic equation という概念をつくりました。 Symbolic Equation の初出は Ferenczi (1913) の "The Ontogenesis of Symbols" だと思います。
- p.114 ビオンがジョン・リックマンの分析を受けていて、リックマッンが亡くなったのでメラニー・クラインの分析を受けたというように書いてますが、リックマンが亡くなったのは1951年。メラニー・クラインとの分析は1946〜1952年といわれているので、別にリックマンが亡くなったからクラインの分析を受けたわけではありません。
- p.147 アレックス・ストレイチー → アリックス・ストレイチー フロイトの英訳者ジェイムズ・ストレイチーはバイセクシュアルという話で、奥さんも男性名になってしまいました。
- p.154 「転移について On Coutertranfernce」 → 「逆転移について On Countertransference」 前述のハイマンによる「対象関係論の基礎」に載っている逆転移論文の古典。どうしてこうなった・・・。
- p.208 でんぐり返し → とんぼがえり バリントの有名症例。
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