こどもの精神分析 クライン派・対象関係論からのアプローチ/木部則雄


内容(「MARC」データベースより)
メラニー・クラインおよび英国対象関係論の理論、技法に基づき、クライン派精神分析の基礎知識、乳幼児観察、こどもの精神分析治療「プレイ・テクニック」、こどもの精神分析的コンサルテーションの技法などを解説する。
目次
第1章 クライン派のこどもの精神分析理論とその応用
第2章 乳幼児観察とその応用―乳幼児が語ること
第3章 クライン派の「プレイ・テクニック」の技法と実際
第4章 クライン派と自我心理学との相違―チェシック『子どもの心理療法』のケースを通して
第5章 こどもの心的世界のアセスメント
第6章 精神分析的考察『千と千尋の神隠し
第7章 精神分析的考察『海辺のカフカ
 「精神分析的考察『千と千尋の神隠し』」が気になって心臨で買ってきました。『千と千尋』は私も講義でさんざん使っていているので、ああいうこともこういうことも書かれちゃったかな・・・と心配半分、期待半分で読みましたが、基本的にクラシックな精神分析的解釈で見事にかぶりませんね。こりゃ、また論文書くしかないかな。
 釜爺が蜘蛛なので「肯定的な結合的両親像」というのはさすがにクライニアン、これでいくとスパイダーマンはヒーロー的結合的両親像、怪奇蜘蛛男は秘密組織的結合的両親像、ムカデは乱交パーティ、蜘蛛女のキスは・・(以下略)
 さらにスプーのタコ恐怖も結合的両親像によるものですね。まあ、あのぬらぬらした感じは、釜爺よりは近いかな。


 『千と千尋』、『海辺のカフカ』のクライニアン的考察以外は、メルツァー、タスティン、ビックらを引用しつつ、正真正銘のこどもの精神分析です。クライン派のプレイ・テクニックはほんとに、一緒に遊ぶこともなく、こどもの遊びを解釈し続けるのですね。著者がこどもに解釈するのを聞いて、怪訝な顔をするお母さん・・・そりゃそうでしょう。

 こどもの内界を尊重する姿勢には学ぶところは多いのですが、やっぱり自分は対人交流とか環境とかも重要なんじゃないのかなと思ってしまいます。

  • p.1 フグ・ヘルムス Hug-Hellmuth → フーク・ヘルムート 甥に殺されてしまった女性児童分析家。
  • p.34 アーサー・クライン Arther Klein → アルツール・クライン Arthur Klein メラニー・クラインの母方のはとこ、元夫。
  • p.36 グローバー Glover → グラバー クラインの娘メリッタと組んでクライン批判を行った分析家。まあ、こりゃディプーパープルのベーシストをこう表記してしまった人が悪いね。
  • p.159 7歳の男の子が描いた胸に「R」のマークのあるロボット 著者はこどもを守る正義 right の R と推量しますが、そりゃ、やっぱりポケモンロケット団でしょ、と思います。ロケット団は「世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため愛と真実の悪を貫く」んだから、これを単純な正義の味方ととると解釈が逆になる、むしろこどもの罪悪感をここにみるのがクライニアンらしい気もします。
  • p.192 千尋に10匹の豚の中から両親を見つけることができれば → 12匹


こどもの精神分析―クライン派・対象関係論からのアプローチ
こどもの精神分析―クライン派・対象関係論からのアプローチ木部 則雄

岩崎学術出版社 2006-10
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