献本いただきました 「頭の問題 精神医学におけるライフスタイル論の新展開/佐野史生」

 献本いただきました。著者は精神科のユーザーの方です。ぱらぱらと目を通してみましたが、広範な文献が引用されていて、なかなかの労作という感じです。これから読んでみます。


 「頭が悪い」という言葉は、一般的に人格の否定の側面を持つ。足が悪い、目が悪い、耳が悪い、胃が悪いというのは病気を指す言葉になるが、頭が悪いは脳に病気があるという意味よりも別の意味でとらえられることが多い。頭の問題は長い間ずっと誤解されてきた。本書の「頭の問題」の名付けの由来は、精神医学の言う障害があるということ自体を指しているのではない。そうではなく問題を生みだしている構造に目が向かないからこそ、より問題が深刻化するそもそもの障害論と私たちの価値観やライフスタイルとの関係に焦点を当てて名付けたものである。 従来の精神医学は症状を取り除くことを主要な目的として、対症療法的な考え方や方法論を追求してきた。ストレスによって精神疾患が発症することがこれまでくり返し指摘されてきたにもかかわらず、ストレスを生みだす構造とライフスタイルの関係性については十分に議論されてこなかった。ストレスに対応しているのが健常者であり適応破綻したのが障害者であるという認識は、精神疾患の主要な要因であるストレスの減少させことができない。結果としてストレスフルのライフスタイルを変えられないために、精神症状を維持、悪化しながら、ストレスに対応している私たち自身を問題のない自分として認識するようになる。問題があること、障害があること自体ではなく、問題を生みだす構造と私たちの行動(ライフスタイル)の関係性が理解できないために、問題解決行動が形成されない“頭の問題”の構造は、経済問題や環境問題についても同じことが言える。お金でしか経済価値を測れないために、昨日よりも誰かよりも多くの収入がないと常に経済破綻の危機ととなり合わせにある。ストレスに対応することでしか生活が成り立たないために、結局は適応破綻となる。こうした問題意識のもとに、これまでの精神医学や認知心理学のワーキングメモリ研究を理論的基礎とし、ストレスと心的機能の関係性を再定義しストレスを減らす具体的なライフスタイル論を提案している。
頭の問題 精神医学におけるライフスタイル論の新展開
頭の問題 精神医学におけるライフスタイル論の新展開佐野 史生

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