いとこの霊媒ヘレーネ・プライスヴェルクを博士論文で扱い、ほとんどプライバシーを暴露した上で、退化した血だのといったひどい書き方をして故郷に住めなくしてしまったり、患者であったザビーナ・シュピールラインとの専門家として非倫理的であるだけでなく、問題がザビーナにあるかのように弁明するなどといった卑劣な態度など、かつてユングを熱心に読んだものとしてはほんとうにうんざりするようなことが、いろいろな書物の出版によって明らかになっています。この本でもユングが太陽の揺れるペニスから風が吹くという有名症例を発見した助手のホーネガーが自殺した後に、いかに自分のものに書き換えていったかなどが明らかにされていて、うんざり度がさらに高まります。
本書はタイトル通り、カルトの視点からユング派を捕らえ、ユングがいかに自己崇拝の個人宗教を作り上げていったかに焦点をあてた書籍です。集合的無意識の考えが、大地と結びついた民族観、そして太陽崇拝といかに結びついていたか、神智学などの19世紀オカルティズム、ロマン主義、ニーチェ主義といった文脈からユングを捉え直します。
ヒッピーの家族解体主義の根源はヨーロッパのアスコーナ文化にありますが、その思想の中核をになった精神科医オットー・グロースとユングとの興味深い関係も明らかにされています。オットーは犯罪学者である父親との確執から統合失調症と診断されブルクヘリツリに入院し、ユングが主治医となります。ユングがユングフラウといういわばハーレムを形成したのが、オットー・グロースとの12時間にわたるセッションなどのほとんど双子転移といってもよいような治療関係の中で構築されたのではないかという興味深い指摘も知りました。
新装再版されました。
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