精神療法の実践的学習 下坂幸三のグループスーパービジョン/広瀬徹也 編

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 今年亡くなられた摂食障害、家族療法、精神分析などを専門とする精神科医下坂幸三先生の帝京大学における11年にわたるグループ・スーパービジョンの記録。5つの事例検討と、参加者と先生による座談会をおさめている。
 5例いずれも治療者は精神科医で入院患者を対象としているため、家族療法的な接近やリミット・セッティングの問題も検討の対象となっている。週1回の個人面接による心理療法のスーパービジョンとはだいぶ雰囲気が違うかもしれない。
 でも、実は心理療法の基本は、こういう面接の外と中のすべての責任をひとりの治療者がひきうけるという形だろうと思う。そこからクライアントの健康さに任せて、現実的なことは本人に任せて、週1回内省的な面接を行うとか、あるいは現実的なマネジメントは別の人に任せるといった応用がでてくると考えた方がよい。
 初心者の内は週1回のきっちりした枠組みの中で、ATスプリットによって現実的な責任から解放されたところでクライアントに向きあうことは重要かもしれないが、そればっかりやっていると面接室の外側が想像できない臨床家ができあがる。
 座談会には内海健先生も参加、いやいや事例を提示したとか、精神病理学的な抽象的な議論を厳しく追及されたという記載もおもしろかった。
 お薦めです。

  • p.98 アルキシア → アノレキシア ギャル字化してしまったわけですね。

精神療法の実践的学習―下坂幸三のグループスーパービジョン
精神療法の実践的学習―下坂幸三のグループスーパービジョン広瀬 徹也 編

星和書店 2004-11
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