ソーシャルワーカーイメージの個人的原点 「精神障害のある人々の自立生活―当事者ソーシャルワーカーの可能性/加藤真規子」

 アメリカでも州によっては制度として取り入れられている精神障害当事者のソーシャルワーカー、ピアカウンセリングの可能性について。アメリカでのパイオニア、『精神障害者自らの手で』の著者、ジュディス・チェンバレンとの交流の記録など、非常に興味深い内容です。
 いや、考えたらぼくが一番最初に接したソーシャルワーカー(という意識は当時はなかったんだけれど)って加藤さんなんだよね。曜日は違うんだけど同じ保健所のデイケアに関わっていたのでした。当時から自宅に仲間を泊めたりという活動をしているということはうっすらと聞いていて凄いな、自分にはできないなと思ってました。精神医療に携わる人は是非読むとよいと思います。


 一点だけひっかかったのはちょっと恣意的に思える統計の数値の使い方。精神障害者の犯罪率の低さをいうなら、殺人・放火など重犯罪での犯罪率の高さを記載しないとアンフェアだし、ヨーロッパ諸国の社会保障費の配分額の高さを言うなら高率の付加価値税を記載する必要があります。昔は社会運動っていうのは自らの正当性をいうために資料の自分に都合のいい部分だけ抜き出すというのが当たり前だったんだけど、もうそういう時期じゃないと思います。

精神障害のある人々の自立生活―当事者ソーシャルワーカーの可能性
精神障害のある人々の自立生活―当事者ソーシャルワーカーの可能性加藤 真規子

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