著者の専門は国際比較医事刑法、少年法、犯罪学。現行法では心神喪失や心神耗弱にあたらないとされるパーソナリティ障害をもった犯罪者への処遇についての考察。ドイツでは触法精神障害者に対して、通常の刑事罰に加えて医療措置も判決として下されるとのこと。
オランダの「人格障害犯罪者」について触れている章もありました。かつてのオランダの司法医療では精神分析が強く、2005-11-05 - 裕’s Object Relational World 司法心理療法などで、殺人犯に週5回の精神分析をしていると書かれていてびっくりしたものですが、現在では
ということです。まあ、それはそうでしょう。
この精神分析理論では、「人格障害犯罪者」治療には殆ど効果をもたらさないことが明らかになるとともに、9人いた精神分析医も訪問時には、1人もいないとのことであった。(p.132)
多くの年代にわたる論文が列挙されている感じで、筆者の主張がなんなのかが法律的な素人にはいまひとつわかりにくかったです。
なんて記述は少年法の専門家としてどうかと思いました。
さらに、幼少から、テレビ・パソコン付の個室を与えられた多くの子供達は、人間的コミュニケーションやソーシャル・エンジニャリング(人間工学)の方法を知らず「おたく」族となって家に「閉じ込もり」、インターネット・ポルノやホラー・ビデオでボーダーレス社会の典型である「バーチャル(仮想)社会」での「究極の殺しのテクニック」を学び、いじめた相手や傍観者を含めた社会への復習の動機づけを学ぶのである。(p.8)
「ケルンベルク」って誰かと思ったら、「カーンバーク」のことでした。でもよく考えたら彼はウィーン生まれだから出生地発音主義に従えばそう間違った表記ではないかも。er を「エル」という表記は古くさいものにせよ。
人格障害犯罪者に対する刑事制裁論―確信犯罪人の刑事責任能力論・処分論を中心にして (慶應義塾大学法学研究会叢書) | |
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