サイコセラピーの部屋/岩井俊明

 サイコセラピー入門、松木先生の「私説・対象関係心理療法入門」の間口をもっと広げて、エビデンス・フレイバーを効かせた感じ。「これが正しい」みたいな押しの強さが、前著「逃亡者たち」のような高踏的なネーミングを思い出させて、ちょっと読んでいてしんどいところも。謙虚な成田善弘先生の本と併読していたからかもしれないけど。
 グローバリゼーション万歳、DSM礼賛路線もちょっとどうかなと思いました。

  • p.116 「多くの優秀な弟子たちが彼(=フロイト)の元を去った」 ユングアドラーはいいとして、ホーナイ、サリヴァン、フロムをあげるのはどうか。面識がないんじゃないのかな?あったとしてもわずかなものでしょう。
  • p.116 対象関係論の説明が、クラインとカーンバーグと対人関係学派を中途半端にまぜて説明しているのでややわかりにくいかな。まあ、広い意味で言ったらみんな対象関係論なんだけどね。
  • p.118 自己心理学の説明で「他者存在としての自己対象」っていう表現はまずいのでは。他者と自己の中間領域でその両方の性質をあわせもつ内的表象のことをいうのだと思ったけど。
  • カウンセリングの起源としてイギリスの職業指導運動というのが挙げられているけれど、アメリカの間違いじゃないだろうか。通常、職業指導運動は1908年、フランク・パーソンズがボストン職業局の開設を開闢としているようだけど。

サイコセラピーの部屋―心理療法の理解と実践のために
サイコセラピーの部屋―心理療法の理解と実践のために忠井 俊明

カニシヤ出版 2005-12
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