雑誌に取り上げられた際に、登場する宇宙人を『ひばくせいじん』と表記してしまったのがきっかけで、存在しないことにされてしまったウルトラセブンの第12話『遊星より愛をこめて』。このような現在目にすることが難しくなっている作品を著者は封印作品と読んでいますが、その成立の経過を追ったルポルタージュ。よくあるサブカル本かと思いきや結構突っ込んだ取材がされていて面白かったです。
ぼくも封印作品というとまずはスペル星人を思い浮かべるわけです。ウルトラセブンをリアルタイムでみた世代ではなくて、小さい頃みた怪獣図鑑には載っているのにテレビでは一度も見たことありませんでした(というか未だにみていない・・・ネットを探せばどこかで見られるのでしょうが)。被爆関連の抗議があって「封印」されたということを何で知ったかはよく覚えていません。けれど、もう小学校の頃は知っていたような気がします。
思いがけず精神医療ともかなりの接点がありました。第2章、「裁かれない狂気」が取り上げているのは、『怪奇大作戦』の第24話「狂鬼人間」、刑法39条を利用して自ら狂気に陥り無罪となる犯罪者の話です。「きちがい」という言葉がいかにして放送禁止用語になったかの経過や、犯罪被害者遺族であり、精神科ユーザーをきょうだいにもつ評論家の日垣隆氏へのインタビューも掲載されています。
第3章「忘れられた予言」は映画『ノストラダムスの大予言』で、これは被爆関連の描写や食人描写が元で封印されてしまうのですが、この映画の思想的なバックボーンが西丸震哉氏(島崎藤村の兄の孫である三兄弟、精神科医、西丸四方、島崎敏樹の末弟)。
第4章「禁じられたオペ」では、ブラック・ジャックのロボトミー表現が元で封印されますが、そのとき抗議を行った団体の一つに東大精医連(東大では学生運動時に精神科医局が外来と病棟、いわゆる赤レンガに分裂した状態が長年続いた)があり、手塚治虫への抗議には精神科教授であった台弘氏へのロボトミーの告発などが背景としてあったことが書かれています。
また関係者として東大精医連の中心人物であった精神科医の富田三樹生氏へのインタビューが行われています。
ユーズドで随分安く手に入りますから、ここら辺に興味がある方は読まれるとよいでしょう。
封印作品の謎 | |
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