明治期の文学者、黒岩涙香は『鉄仮面』、『巌窟王』などの翻案小説などで知られますが、ミステリ史においても重要な人物です。ぼくも幻影城の増刊くらいでしか知りませんが、『白髪鬼』、『幽霊塔』など乱歩が再翻案しているところからその重要性もわかるというもの。しかし、涙香が翻案したミステリの原作はミステリ史からは忘れ去られ、現在では入手も困難な状況です。
本書には長い間不明だった『幽霊塔』の原作の発掘など興味深い論文が収められています。
個人的に特に興味深かったのはオカルティズムとミステリの関連。神智学運動の中心人物であったブラヴァツキー夫人と、メイベル・コリンズ、マリー・コレルの関連、グルジェフがイギリス文壇に与えた影響とオレージ・ショックなど興味深く読みました。できればこのテーマでもう一冊書いていただきたい感じです。