説教モードにはいらなきゃいいんだけど 「上野玲/都合のいい「うつ」」

 Twitter でいろいろな本の著者が身近になったのはいいんだけど、花風社の場合もそうですが、純粋に本だけを評価するって言うのはかえって難しくなった気がします。


 ジャーナリストで(躁?)うつ病当事者でもある上野さんのうつ病本。今までの著作はどちらかというとご自身の闘病体験がベースになっているものが多かったように思いますが、本書ではジャーナリストらしいアプローチというか、さまざまなうつ病本から昨今のうつ病現象を考察しています。新型うつ病概念に対しては批判的で、その概念の布教元として香山リカ先生を厳しく批判しています。他の本の後書きでは実は香山先生のファンであり、その著作にならってその本を書いたという言及があったと思うのでここらへんの愛憎がひとつの読みどころ。
 事例に関してはそれは新型うつ病でもなく、むしろパーソナリティ障害とか、発達障害ではないのかというような事例がでていますね。ここらへんを整理するのは新書という形では無理があるのかもしれませんが、ちょっと誤解を招くような気がします。
 著者はディスチミア型のうつ病に関しても、これまではどちらかというと甘えという見方をしていたような気がしますが、本書ではいろいろな意見を併記してあって、そこらへんは好感が持てました。
 ただ残念なのはときおりやっぱり当事者として、ジャーナリスト・モードじゃなくて説教モードに入ってしまうことが多いところ。扶桑社の社員に対する個人情報漏洩の恨みなど書かない方がうつ病本としてはまとまるのではないかと思うのですけど、そうも行かないのでしょうね。

都合のいい「うつ」(祥伝社新書212)
都合のいい「うつ」(祥伝社新書212)上野 玲

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