2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

悲劇の解読/鈴木瑞実

何だか十数年ぶりにラカンのわからなさに直面しています。著作は統合失調症というフィールドで中井久夫先生とラカンが出会ったというような感じかな。ラカンの現実界と背日臼、違ったゼビウスのバグを重ね合わせるところなんかは時代を感じますが。 ラカンの…

精神分析のスーパーヴィジョン/中野良平

著者は古澤平作方式の40分自由連想、20分対面法の精神分析を行う古典的なフロイディアン。「症状の原因を知ることで治療を行う」とこれほど明示する分析の人も珍しいのでは。シリアル・キラーとか、地震とか怖い原因はわかっても怖いのは変わらないけどなー…

流れを読む心理学史/サトウタツヤ 高砂美樹

【購入数】★★ 目次 序 章 心理学史の方法論:どのように歴史を学ぶのか 第1章 19世紀の心理学:ドイツとアメリカにおける展開 第2章 20世紀の3大潮流とその批判:心理学の理論的展開 第3章 心理学と社会:心理学領域の拡大 第4章 日本の心理学史:受容…

少年A矯正2500日全記録/草薙厚子

【購入数】★★ 神戸の連続児童殺傷事件の犯人少年Aの医療少年院での矯正のルポルタージュ。 司法矯正領域っていうのはやっぱりしんどい仕事だね。通常のセラピーには、本人のモチベーションという逃げ道がある。少年Aのような事例には、こういう逃げ道は許…

オレステス・コンプレックス/片田珠美

「攻撃と殺人の精神分析」の著者の第一著作集。「攻撃と殺人の精神分析」でも取り上げていた症例が、章ごとに何度も取り上げられている。著作集にする時点でもう少しまとめられなかったものかと思う。 象徴はまずものの殺害として現れる(Lacan) Apophanie (C…

寝ながら学べる構造主義/内田樹

【購入数】★ 哲学青年としての自分は高校時代のサルトルあたりでとまっている。大学時代にかぶれたフランス現代思想なんかもわかった気になっただけで結局実になっていない。かろうじて講義に出ていた故・丸山圭三郎先生のソシュール論くらいが頭の中に残っ…

CINDY SHERMAN シンディ・シャーマン写真集

樫村愛子氏の書籍で取り上げられていたので借りてみました。女性写真家によるセルフ・ポートレート集ですが、さまざまな姿に変装した姿で写されており、とても同一人物とは思えません。昔の架空の映画のスナップ写真、悪魔や獣に変身した姿は奇妙にエロティ…

危ない精神分析/矢幡洋

危ない「精神分析」とあるけど、本の内容のほとんどは記憶回復療法批判。ここらへんは確か、藤山直樹先生が精神分析研究で「精神分析」という言葉はもっと厳密に使わなきゃいけないと批判していたっけ。もっともそうするならまず「精神分析研究」という学会…

人格障害をめぐる冒険/大泉実成

【購入数】★ 「消えたマンガ家」のノンフィクション・ライターが犯罪と「人格障害」周辺を描きます。著者の家庭環境、エホバの証人入信時の体験、著者のご両親の東海原発事故被災とPTSD発症と裁判、ご子息の多動傾向など、私小説的に「人格障害」という診断…

関与と観察/中井久夫

中井久夫先生の第5エッセイ集。今回のメインテーマは戦争です。 ここら辺の臨床感覚がやっぱり常人とは違うなというところ。 私は、初診時にはしばしば、肉や魚から、好きな果物、飲み物、お菓子、好きな地方、法学、天候、季節、色彩、好みのスポーツ、ホビ…

ユングのレイシズム/DSM過剰診断

psy

ユングは、1929年フロイトと合衆国に同行したときに公立病院の15人の黒人の夢と発言を分析し、「黒人の精神が系統発生的に原始的である」と発言した。彼は、黒人は「白人よりも歴史の層が薄い」と報告した。また彼は、黒人の子どもっぽさは伝染すると指摘し、その伝染…

TCI

psy

http://www.hc2.co.jp/Menu2/Menu2Cnt3.html

はじめての医療面接/斎藤清二

富山大学保健管理センターの斎藤先生が書かれた一般の医療面接のノウハウ本です。このくらいきめこまかい対応をしてくれると医療にも気持ちよく書かれますね。ただ実際の医師の忙しさを考えると、どこをピックアップするかが重要になってくるかと思います。…

「心理学化する社会」の臨床社会学/樫村愛子

カルチュラル・スタディーズ/臨床社会学(言語の成立に関わる「否定」の作用と他者について 若者たちのポストモダン的共同性 テレビと若者たちのコミュニケーション ほか) 宗教の心理学化(自己啓発セミナーの困難 自己啓発セミナーと『エヴァンゲリオン』 「…

ナラティヴ・セラピーの世界/小森康永・野口裕二・野村直樹

序章 ナラティヴ・セラピーの世界へ 第1部 ナラティヴ・セラピーの背景(社会構成主義という視点―バーガー&ルックマン再考 野口裕二 病いの経験を聴く―医療人類学の系譜とナラティヴ・アプローチ 江口重幸 実証から実践へ〜ガーゲンの社会心理学〜 杉万俊夫・…

僕の妻はエイリアン/泉流星

アスペルガー障害当事者の妻が、夫の視点から夫婦生活を描いています。そもそも他人の気持ちを推し量りにくいというのがアスペルガー障害の特徴とされているわけですから、さぞここまで書くには夫婦の間のご苦労があったことでしょうね。僕の妻はエイリアン …

サバルタンは語ることができるか/G.C.スピヴァク

原題は "Can the Subaltern Speak?" 「サバルタンはしゃべることができるか?」という方がニュアンス的には近いか。著者はアメリカ在住のインド人女性批評家。内容はデリダだのフーコーだのフランス現代思想満載ではっきりいってよくわからないけど、何だか…

期間限定の思考 「おじさん」的思考2/内田樹

アジサカコウジのゆるいマンガがついていて笑いつつも考えさせられる内容です。アマゾンのブックレビューに小谷野敦氏がレビューを書いてますね。期間限定の思想―「おじさん」的思考〈2〉内田 樹 晶文社 2002-11売り上げランキング : 62,839Amazonで詳しく見…

言語と文学/モーリス・ブランショ ジャン・ポーラン 内田樹

内田先生がすでに著書でふれていたヴィシー政権下で書かれた一見すると文芸評論だけれど、解読すれば政治批判の書。ジャン・ポーランの元の文芸評論に、内田先生の解題を付してある。 あらゆる夾雑物を廃した純粋性の追求は、その過度の観念性ゆえに現実の局…

ヒースクリフは殺人犯か?/ジョン・サザーランド

ジョン・サザーランドの文学へのつっこみエッセイの19世紀編。 34編のうち読んでいたものは、フランケンシュタイン、ジーキル博士とハイド氏、ドリアン・グレイの肖像、まだらのひも、透明人間、ドラキュラのみ。ヒースクリフは殺人犯か?―19世紀小説の34の謎…

逆検定中国国定教科書/井沢元彦 金文学

逆検定中国国定教科書―中国人に教えてあげたい本当の中国史井沢 元彦 金 文学 祥伝社 2005-09売り上げランキング : 4,264Amazonで詳しく見るby G-Tools関連商品 世界がさばく東京裁判 仏教・神道・儒教集中講座 抹殺された大東亜戦争―米軍占領下の検閲が歪め…

心は実験できるか/ローレン・スレイター

【購入数】★ 1 スキナー箱を開けて―スキナーのオペラント条件づけ実験 2 権威への服従―ミルグラムの電気ショック実験 3 患者のふりして病院へ―ローゼンハンの精神医学診断実験 4 冷淡な傍観者―ダーリーとラタネの緊急事態介入実験 5 理由を求める心―フェステ…

現代小説38の謎/ジョン・サザーランド

文芸評論家の方のジョン・サザーランドの英米文学に記載された些細な矛盾へのつっこみ集。既読の小説の部分だけ読みました。例えば蠅の王で漂流した少年たちがメガネで火をおこすのは不可能だとか・・・ 読んでいたのは、ロリータ、老人と海、クラッシュ、ユ…

「心の専門家」はいらない/小沢牧子

序章 臨床心理学をなぜ問うか 第1章 現代社会とカウンセリング願望 第2章 「心の専門家」の仕事とその問題群 第3章 スクールカウンセリングのゆくえ 第4章 「心のケア」を問う 終章 日常の復権に向けて 筆者は日本社会臨床学会運営委員で、専門は「臨床心理…

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スペルマン病院

誘拐された赤ちゃん無事に帰ってきて良かったね。あの病院名でいろいろ連想した人は日本中にいたに違いないですね。この人の名前にちなんでつけられたキリスト教系の病院のようです。 http://www.nps.gov/elro/glossary/spellman-cardinal.htm

精神疾患はつくられる/Herb Kurchins & Stuart A. Kirk

【購入数】★ 原題は"Making Us Crazy" Us は United States にかけている。アメリカ精神医学会の診断基準DSMがいかに政治的な思惑によって拡張されているかを告発する書。アメリカ国立精神保健研究所の調査によれば、アメリカ国民の24.1%は1年間のうちになん…

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diatropism 植物の応屈性 pyro- 火の fogdog 霧堤 copacetic 申し分のない

心理臨床スーパーヴィジョン/F.W.カスロー 編著

編者はフロリダ・カップル家族研究所所長。家族療法系のスーパーヴィジョンについて書かれています。 率直というか、文化の違いというかなんというか、下記のような記述にはぎょっとしてしまいますね。 ある女性の患者(たった8歳というのに)の前で、正直にい…

自己コントロールの檻 感情マネジメント社会の現実/森真一

内申書、就職活動、心療内科、心の教育、自助マニュアルなどの素材を、デュルケームの人格崇拝、リッツアーのマクドナルド化、ホックシールドの感情マネジメントなどの概念を通じて、その心理主義化を批判する。 ”心理主義化”とは、心理学や精神医学の知識や…